The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

June 25, 1998 Vol. 338 No. 26

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

ワクチン非接種介護ホーム入所者における多剤耐性肺炎球菌肺炎と菌血症の大流行
AN OUTBREAK OF MULTIDRUG-RESISTANT PNEUMOCOCCAL PNEUMONIA AND BACTEREMIA AMONG UNVACCINATED NURSING HOME RESIDENTS

J.P. NUORTI AND OTHERS

背景

肺炎球菌による疾患の大流行はまれで,主に施設内で起る.流行性,侵襲性多剤耐性肺炎球菌による疾患は米国の成人には認められていなかった.1996 年 2 月,オクラホマ農村部の介護ホームの入所者に多剤耐性肺炎球菌肺炎の大流行があった.

方 法

入所者および従業員から,培養用の鼻咽頭綿棒標本を得た.肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)単離菌の血清型を分類し,パルスフィールドゲル電気泳動によって比較した.菌の集簇および疾患に関連する因子を特定するため,レトロスペクティブコホート試験を行った.

結 果

肺炎は,入所者 84 人中 11 人(13%)に発症し,そのうち 3 人が死亡した.多剤耐性肺炎球菌の血清型 23F が,肺炎の入所者 11 人中 7 人(64%)の血液および喀痰から,そして検査した入所者 74 人中 17 人(23%)と検査した従業員 69 人中 2 人(3%)の鼻咽頭標本から単離された.血清型 23F 単離菌はすべて,パルスフィールドゲル電気泳動によれば同一であった.抗生物質の最近の使用は,菌の集簇(相対危険度,2.3;95%信頼区間,1.3~4.2)および疾患(相対危険度,3.6;95%信頼区間,1.2~10.8)の双方に関連した.肺炎球菌のワクチン接種を受けていたのは,入所者 3 人(4%)にすぎなかった.入所者に肺炎球菌のワクチン接種を行い,予防的抗生物質を投与した後,肺炎のさらなる症例は認められず,保菌者の割合はかなり減少した.

結 論

この大流行では,一つの肺炎球菌株が介護ホームの入所者と従業員の間に拡がった.ワクチン非接種集団に強毒菌が高率で定着することが,高い罹患率の一因となる.一連の肺炎球菌による疾患は介護ホームでは過小認識されている可能性があり,薬剤耐性肺炎球菌の施設内大流行を防止するためには,肺炎球菌ワクチンのより広範な使用が重要である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 338 : 1861 - 8. )