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March 26, 1998 Vol. 338 No. 13

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多発性原発性黒色腫における CDKN2A 変異
CDKN2A MUTATIONS IN MULTIPLE PRIMARY MELANOMAS

J. MONZON AND OTHERS

背景

CDKN2A 腫瘍抑制遺伝子(p16p16INKMTS1 としても知られる)におけるジャームライン変異は,遺伝性黒色腫のいくつかの家系では黒色腫の発症に関係している.CDKN2A の変異が,散発性(非家族性)黒色腫に対する素因を与えるか否かはわかっていない.散発性黒色腫を有するある患者では,一つ以上の別の原発性病変が発症しており,このことは,これらの患者の内何人かには癌に対する体質的な遺伝的易罹患性があることを示唆している.われわれは,この素因がジャームライン CDKN2A 変異による可能性があるという仮説を立てた.

方 法

ポリメラーゼ連鎖反応,一本鎖構造多形分析および直接 DNA シークエンシングを用いて,家族に疾患の既往がない多発性原発性黒色腫患者における CDKN2A 遺伝子のジャームライン変異を特定した.定量的酵母 2 ハイブリッドアッセイを用いて,CDKN2A 変種の機能的重要性を評価した.

結 果

多発性原発性黒色腫患者 33 人中,5 人(15%;95%信頼区間,4%~27%)がジャームライン CDKN2A 変異を示した.これらの変異には,コード配列の 5' 末端で 24 bp の挿入,ミスセンス変異 3 ヵ所(24 位のアルギニンがプロリン,53 位のメチオニンがイソロイシン,および 56 位のセリンがイソロイシン),そして 307~308 位での 2 bp の欠失(その結果,切断 CDKN2A 蛋白が生じる)が含まれた.三つの家系では,発端者と同一の CDKN2A 変異が他の家系構成員にも認められた.変異を有する二つの家系では,黒色腫の家族の既往に関するこれまで知られていなかった証拠を発見した.

結 論

家族に既往がない多発性原発性黒色腫の患者の内何人かは,CDKN2A 遺伝子にジャームライン変異を有する.多発性原発性黒色腫の存在は,指標患者ばかりでなく家系構成員においても,黒色腫に対する遺伝的易罹患性のシグナルとなる可能性があり,黒色腫調査プログラムによって恩恵を受ける可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 338 : 879 - 87. )