October 15, 1998 Vol. 339 No. 16
拡張型心筋症の発生率と HIV 陽性患者の心筋細胞における HIV の検出
INCIDENCE OF DILATED CARDIOMYOPATHY AND DETECTION OF HIV IN MYOCARDIAL CELLS OF HIV-POSITIVE PATIENTS
G. BARBARO, G. DI LORENZO, B. GRISORIO, AND G. BARBARINI
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染は,拡張型心筋症の重要な原因としてますます認識が深まっている.しかし,後天性免疫不全症候群に心筋疾患が起る病態機序は不明である.
拡張型心筋症の発生率を評価するため,そして心筋症の発症に関連する臨床変数を解析するために,無症候性の HIV 陽性患者 952 人に関するプロスペクティブ長期臨床心エコー追跡調査試験を実施した.心エコー法により拡張型心筋症と診断された患者全員に対し,組織学的,免疫組織学的,およびウイルス学的評価を心内膜生検により行った.
平均(±SD)追跡期間 60±5.3 ヵ月のあいだに,心エコー法により拡張型心筋症と診断されたのは 76 人(8%)で,平均年間発生率は患者 1,000 人当たり 15.9 例であった.拡張型心筋症の発生率は,CD4 数 400/mm3 未満の患者(CD4 数≧400/mm3 の患者と比較して)と,ジドブジン療法を受けている患者では高かった.心筋炎は,拡張型心筋症患者の 63 人(83%)において組織学的に診断された.炎症滲出細胞は,患者の 71%では主として主要組織適合複合体クラス I 抗原陽性の CD3 陽性 CD8 陽性リンパ球であった.患者 58 人の筋細胞では,in situ ハイブリダイゼーションによって HIV 核酸配列が検出され,活動型心筋炎は 58 人中 36 人に認められた.これらの患者 36 人中,6 人(17%)はまた B 群コクサッキーウイルスにも感染し,2 人(6%)はサイトメガロウイルス,そして 1 人(3%)はエプスタイン・バー(EB)ウイルスにも感染していた.
拡張型心筋症は,心筋組織に及ぼす HIV の直接作用または HIV によって誘発された自己免疫過程のいずれかに関連する可能性があり,おそらくその他の心臓親和性ウイルスに関連する可能性がある.