October 29, 1998 Vol. 339 No. 18
腺腫および癌の前駆病変としての大腸異常陰窩巣
ABERRANT CRYPT FOCI OF THE COLON AS PRECURSORS OF ADENOMA AND CANCER
T. TAKAYAMA AND OTHERS
大腸異常陰窩巣は腺腫および癌の前駆病変となりうるが,この病変の検討は主に,すでに大腸癌と診断された患者の手術検体で行われている.
拡大内視鏡を用いて,健常被験者 171 人,腺腫患者 131 人,大腸癌患者 48 人における異常陰窩巣の保有率,数,大きさ,異形成の有無と,年齢別の分布を調べた.また,被験者 11 人(健常被験者 4 人,腺腫患者 6 人,大腸癌患者 1 人)において,スリンダク 100 mg を 1 日 3 回 8~12 ヵ月間投与する前後の異常陰窩巣の保有率を前向きに評価し,スリンダクを投与しなかった 9 人(健常被験者 4 人,腺腫患者 5 人)の結果と比較した.この 20 人は全員ベースラインで異常陰窩巣を有していた.
異常陰窩巣 3,155 個を確認し,そのうち 161 個に異形成が認められた;保有率と数は年齢とともに増加した.異常陰窩巣の数,異形成病巣の有無,病巣の大きさ,腺腫の数のあいだに有意な相関(p<0.001)を認めた.スリンダクの投与後,病巣の数は減少し,11 人中 7 人では消失した.投与しなかった対照群では,病巣の数は 8 人では不変で,1 人ではわずかに増加した(群間の差に関して p<0.001).
異常陰窩巣,とくに,大きく異形成を認めるものは,腺腫および癌の前駆病変である可能性がある.