September 17, 1998 Vol. 339 No. 12
エストロゲン様作用を有する配合漢方薬(PC-SPES)の前立腺癌における臨床的および生物学的活性
CLINICAL AND BIOLOGIC ACTIVITY OF AN ESTROGENIC HERBAL COMBINATION (PC-SPES) IN PROSTATE CANCER
R.S. DIPAOLA AND OTHERS
配合漢方薬は,確立されている治療法以外で一般的に行われている代替療法である.PC-SPES は,8 種類の漢方薬を配合した合剤として市販されており,前立腺癌の非エストロゲン治療として用いられている.他の漢方薬にエストロゲン様作用があることが in vitro で示されていることから,われわれは,PC-SPES のエストロゲン様活性を,酵母,マウスおよび前立腺癌の患者において検討した.
PC-SPES のエストロゲン様活性は,酵母での転写活性化アッセイ,マウスでの生物学的アッセイを用いて測定した.PC-SPES の臨床活性は,ホルモン感受性前立腺癌の 8 例の患者において,治療中および治療後の前立腺特異抗原とテストステロンの血清中濃度を測定することによって評価した.
相補的酵母アッセイでは,PC-SPES のエタノール抽出物の 1:200 希釈物質に,1 nM エストラジオールと同程度のエストロゲン様活性があった.また,卵巣を摘出した CD-1 マウスにおいて,この配合漢方薬は子宮重量を大きく増加させた.前立腺癌患者 6 例中 6 例において,PC-SPES は血清中のテストステロン濃度を低下させ(p<0.005),8 例中 8 例において血清前立腺特異抗原濃度を低下させた.8 例のすべての患者に胸部圧痛と性欲減退が認められ,1 例の患者に静脈血栓症が発現した.高性能液体クロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィー,および質量分析によって,PC-SPES に,ジエチルスチルベストロール,エストロン,およびエストラジオールとは異るエストロゲン様作用をもつ有機化合物が含まれていることが確認された.
PC-SPES は強力なエストロゲン様活性を有している.この規制のない配合漢方薬を使用することは,標準療法あるいは試験段階の治療法の治療効果を見誤らせ,臨床的に重大な意義をもつ有害作用を引き起す可能性がある.