September 24, 1998 Vol. 339 No. 13
心筋梗塞の発症率と冠動脈心疾患による死亡率の動向;1987~94 年
TRENDS IN THE INCIDENCE OF MYOCARDIAL INFARCTION AND IN MORTALITY DUE TO CORONARY HEART DISEASE, 1987 TO 1994
W.D. ROSAMOND AND OTHERS
近年の冠動脈疾患(Coronary Heart Disease, CHD)による死亡率の傾向の決定因子を明らかにするために,われわれは,心筋梗塞による入院,および CHD による病院での死亡と病院外での死亡について,米国の規模の異なる四つの地域社会の 35~74 歳の住人を対象とした調査を実施した(1994 年の対象者の合計は 352,481 人).1987~94 年の心筋梗塞による入院は 11,869 件(抽出した入院サンプル 8,572 件に基づく),冠動脈疾患による死亡は 3,407 件(抽出した 3,023 件に基づく)と推定した.
CHD による平均年間死亡率の低下は,白人男性で もっとも大きく(死亡率の変動,-4.7%;95%信頼区間,-2.2~-7.1%),次いで白人女性(-4.5%;95%信頼区間,-0.7~-8.2%)で大きく,黒人女性(-4.1%;95%信頼区間,-10.3~+25%),黒人男性(-2.5%;95%信頼区間,-6.9~+2.2%)の順であった.全体でみると,CHD による病院での死亡率は年間で 5.1%低下したが,病院外での死亡率の年間低下は 3.6%であった.初発の心筋梗塞による入院率には,男性と女性のいずれにおいても低下を示すような結果は得られなかった;実際には,この入院率は,黒人女性では年間で 7.4%上昇し(95%信頼区間,0.5~14.8%),黒人男性では年間で 2.9%上昇した(95%信頼区間,-3.6~+9.9%).心筋梗塞の再発率は低下し,心筋梗塞後の生存は向上していた.
1987~94 年の心筋梗塞による入院率は,ほぼ一定あるいはわずかに上昇しているということが確認された.それにもかかわらず,CHD による年間死亡率には有意な低下が認められた.今回調査した四つの地域社会で認められた死亡率の低下は,主として治療の向上と心筋梗塞の再発予防によるものと考えられるかもしれない.