多嚢胞性卵巣症候群における自然排卵およびクロミフェン誘発排卵に及ぼすメトホルミンの効果
EFFECTS OF METFORMIN ON SPONTANEOUS AND CLOMIPHENE-INDUCED OVULATION IN THE POLYCYSTIC OVARY SYNDROME
J.E. NESTLER, D.J. JAKUBOWICZ, W.S. EVANS, AND R. PASQUALI
多嚢胞性卵巣症候群の肥満女性は,クロミフェンによる排卵誘発に対して比較的不応性である.われわれは,メトホルミンの投与によってインスリン分泌を減少させれば,クロミフェンに対する排卵反応が亢進するという仮説を立てた.
われわれは,多嚢胞性卵巣症候群の肥満女性 61 人において,メトホルミン 500 mg またはプラセボを 1 日 3 回 35 日間投与し,その前後に経口糖負荷試験を実施した.次に自然排卵がない女性に,メトホルミンまたはプラセボの服用を続けながら,クロミフェン 50 mg を 5 日間毎日投与した.血清プロゲステロンを 14,28,35,44,53 日目に測定し,これらの日のいずれかに濃度が 8 ng/mL(26 nmol/L)を超えれば,排卵が起ったと想定した.
試験の初期段階で自然排卵がなかったため,メトホルミン群の女性 21 人およびプラセボ群の女性 25 人にクロミフェンを投与した.メトホルミン+クロミフェンを投与した女性 21 人では,グルコース経口投与後の血清インスリン曲線下の平均(±SE)面積が 6,745±2,021 μU/mL/分から 3,479±455 μU/mL/分(40.5±12.1 nmol/L/分から 20.9±2.7 nmol/L/分,p=0.03)に減少したが,プラセボ+クロミフェンを投与した女性 25 人では有意な変化はなかった.メトホルミン+クロミフェンを投与した女性 21 人中 19 人(90%)が排卵した(プロゲステロンの平均最高血清濃度,23.8±3.4 ng/mL [7.6±10.9 nmol/L]).プラセボ+クロミフェンを投与した女性 25 人では 2 人(8%)が排卵した(p<0.001).全体として,メトホルミンで治療した女性 35 人中 31 人(89%)が自然に,またはクロミフェンに反応して排卵したのに対し,プラセボで治療した女性では 26 人中 3 人(12%)であった.
多嚢胞性卵巣症候群の肥満女性において,クロミフェンに対する排卵反応は,メトホルミンによるインスリン分泌の減少によって亢進させることができる.