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February 19, 1998 Vol. 338 No. 8

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アルツハイマー病の診断におけるアポリポ蛋白質 E 遺伝子型の有用性
UTILITY OF THE APOLIPOPROTEIN E GENOTYPE IN THE DIAGNOSIS OF ALZHEIMER'S DISEASE

R. MAYEUX AND OTHERS

背景

アポリポ蛋白質 E をコードする遺伝子(APOE)の ε4 対立遺伝子は,アルツハイマー病に強く関連しているが,診断におけるその価値は依然としてはっきりしていない.

方 法

われわれは,26 のアルツハイマー病センターの一つに痴呆症の評価のために委託された患者 2,188 人の臨床診断と剖検時に得た診断を再検討した.臨床診断または APOE ε4 対立遺伝子の有無の感度および特異性を,病理学的に確認したアルツハイマー病を基準として用いて計算した.APOE 遺伝子型の付加価値を多変量解析による試験前および試験後の確率から推定し,偽陽性率に対して感度をプロットする ROC(receiver-operating characteristic)曲線を得た.

結 果

患者 2,188 人中 1,833 人がアルツハイマー病との臨床診断を下され,患者 1,770 人では剖検時に診断を病理学的に確認した.少なくとも一つの APOE ε4 対立遺伝子を有したのは,臨床的にアルツハイマー病と診断された患者の 62%であったのに対し,病理学的に確認されたアルツハイマー病患者では 65%であった.臨床診断の感度は 93%,特異性は 55%であったが,APOE ε4 対立遺伝子の感度と特異性はそれぞれ 65%と 68%であった.APOE 遺伝子型に関する情報を加えることによって,アルツハイマー病の臨床基準を満たす患者では,総合特異性は 84%に増加したが,感受性は低下した.特異性の改善は,年齢,臨床診断,性別および施設間の差の補正後,多変量解析においてなおも統計学的に有意であった.

結 論

APOE 遺伝子タイピングは,アルツハイマー病の診断検査として単独で用いるほど十分な感度または特異性を提供しないが,臨床基準と組み合せて用いれば,診断の特異性を改善する.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 338 : 506 - 11. )