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January 8, 1998 Vol. 338 No. 2

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冠状動脈アテローム性硬化症の進行におけるコレステリルエステル転移蛋白遺伝子の一般的変種の役割
THE ROLE OF A COMMON VARIANT OF THE CHOLESTERYL ESTER TRANSFER PROTEIN GENE IN THE PROGRESSION OF CORONARY ATHEROSCLEROSIS

J.A. KUIVENHOVEN AND OTHERS

背景

高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール濃度は,冠動脈疾患のリスクと逆相関する.コレステリルエステル転移蛋白(CETP)は,このリポ蛋白の代謝に中心的な役割を果たし,このためにアテローム性動脈硬化症に対する感受性を変化させる可能性がある.

方 法

血管造影法により冠状動脈アテローム性硬化症と診断された男性 807 人の DNA の CETP コード遺伝子の多形性の有無を分析した.この DNA 変種が存在する場合を B1 と呼び,存在しない場合を B2 と呼んだ.患者全員が,冠状動脈アテローム性硬化症の退縮を誘導するようにデザインされたコレステロール低下臨床試験に参加し,彼らを無作為割付けして,プラバスタチンまたはプラセボのいずれかによる治療を 2 年間行った.

結 果

CETP 遺伝子の B1 変種は,CETP の血漿濃度がより高く(平均±[SD],B1B1 遺伝子型では 2.29±0.62 μg/mL,これに対し B2B2 遺伝子型では 1.76±0.51 μg/mL),またHDL コレステロール濃度がより低かった(34±8 対 39±10 mg/dL).さらに,プラセボ群ではこのマーカーと冠状動脈アテローム性硬化症の進行とのあいだに有意な用量依存的関係を認めた (血管内径平均の減少: B1B1 遺伝子型では 0.14±0.21 mm,B1B2 遺伝子型では 0.10±0.20 mm,そして B2B2 遺伝子型では 0.05±0.22 mm).この関連はプラバスタチンによって失われた.プラバスタチン療法は,B1B1 保有者では冠状動脈アテローム性硬化症の進行を遅らせたが,B2B2 保有者では遅らせなかった(プラバスタチン服用患者の 16%を占める).

結 論

CETP 遺伝子座の変化と冠状動脈アテローム性硬化症の進行のあいだには,HDLコレステロール血漿濃度および脂質分解性血漿酵素活性とは無関係に有意な関連を認めた.この一般的 DNA 変種は,冠動脈疾患の男性がプラバスタチン治療による利益を受けて冠状動脈アテローム性硬化症の進行を遅らせるか否かを予測するように思われる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 338 : 86 - 93. )