ヒトヘルペスウイルス 8 型感染症の性的伝播と自然経過
SEXUAL TRANSMISSION AND THE NATURAL HISTORY OF HUMAN HERPESVIRUS 8 INFECTION
J.N. MARTIN AND OTHERS
ヒトヘルペスウイルス 8 型(HHV-8)は,カポジ肉腫の病因であると疑われているが,地域住民集団でのその血清学的流行率,その伝播様式,そしてその自然経過に関してはほとんどわかっていない.
1984 年に始まったサンフランシスコ男性健康調査は,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染率が高い地域における人口に基づく男性サンプルの試験である.われわれは,ベースラインで HIV に感染している男性 400 人全員と,非感染男性 400 人のサンプルを調査した.ベースライン血清サンプルの HHV-8 潜伏関連核抗原に対する抗体(抗-LANA)の有無を検討した.血清学的流行率と抗-LANA 血清陽性率に対する危険因子のほかに,カポジ肉腫発症までの時間を分析した.
抗-LANA 抗体は,過去 5 年間に何らかの同性愛的活動を報告した男性 593 人中 223 人(37.6%)に認められたが,異性間性行為のみの男性では 195 人中ゼロであった.抗-LANA 血清陽性は性交感染疾患の既往と相関し,男性の性交パートナーの人数と正比例した.ベースラインで HIV と HHV-8 の双方に感染している男性では,カポジ肉腫の 10 年確率は 49.6%であった.ベースライン抗-LANA 血清陽性は,CD4 細胞数と同性愛パートナーの人数で補正後でも,その後のカポジ肉腫に先行して起り,これに独立して関連した.
HHV-8 感染症の発生率は同性愛男性では高く,同性愛パートナーの人数に相関し,カポジ肉腫に
一時的および独立して関連する.これらの知見は,HHV-8 がカポジ肉腫の原因的役割を果たしており,男性間で性的に伝播する,というさらなる証拠である.