妊娠初期における胎児ダウン症候群に関する母体血清のスクリーニング
SCREENING OF MATERNAL SERUM FOR FETAL DOWN'S SYNDROME IN THE FIRST TRIMESTER
J.E. HADDOW AND OTHERS
ダウン症候群の胎児を見分けるための母体血清のスクリーニングは,現在では妊娠中期に日常的に提供されている.血清アッセイと超音波造影手段を単独,または併用のいずれかによる出生前スクリーニングは,妊娠初期においても可能であるかもしれない.
妊娠 9~15 週で絨毛採取または早期羊水穿刺のために 16 の出生前診断センターを訪れた女性 4,412 人(82%は 35 歳以上であった)について,α-フェトプロテイン,非抱合型エストリオール,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG),遊離 hCG βサブユニット,妊娠関連プロテイン A の血清濃度を測定した.胎児後頸部浮腫の超音波測定の報告も受けた.すべての妊娠について胎児染色体分析を行った.全体で,ダウン症候群の胎児は 61 人認められた.
妊娠 14 週より前に,ダウン症候群に罹患している妊娠 48 例,非罹患妊娠 3,169 例が同定された;五つの血清マーカーのダウン症候群の検出率は以下の通りであった:α-フェトプロテインでは 17%,非抱合型エストリオールでは 4%,hCG では 29%,遊離 hCG βサブユニットでは 25%,妊娠関連プロテイン A では 42%,偽陽性率は 5%であった.hCG と遊離 hCG βサブユニットの血清濃度の測定結果は強く相関していた.妊娠関連プロテイン A の血清濃度と母体年齢とを組み合せて用いると,検出率は hCG に関して 63%(95%信頼区間,47~76%),遊離 hCG βサブユニットに関して 60%(95%信頼区間,45~74%)であった.後頸部浮腫の測定値には施設間でかなりのばらつきがあり,計算に信頼して組み入れることはできなかった.
妊娠初期におけるダウン症候群のスクリーニングは,妊娠関連プロテイン A の測定と,母体血清中の hCG または遊離 hCG βサブユニットのいずれかの測定を組み合せて用いることにより,実行可能である.