October 15, 1998 Vol. 339 No. 16
進行期パーキンソン病における視床下核の電気刺激
ELECTRICAL STIMULATION OF THE SUBTHALAMIC NUCLEUS IN ADVANCED PARKINSON'S DISEASE
P. LIMOUSIN AND OTHERS
特発性パーキンソン病の多くの患者では,レボドパによる治療は,薬剤が作用せずに,パーキンソン症候群の運動症状が存在する「オフ」期間(「薬剤無効期間」とも呼ぶ)と,薬剤が運動性を改善するが,しばしば衰弱性ジスキネジーを伴う「オン」期間(「薬剤有効期間」とも呼ぶ)のあいだに変動があるため複雑である.パーキンソン病の動物モデルでは,視床下核の過剰反応性が認められ,視床下核を電気刺激するとパーキンソン症候群が改善する.したがって,われわれは,パーキンソン病の患者における視床下核の電気刺激の有効性および安全性を明らかにしようとした.
特発性パーキンソン病患者 24 人に,植込み部位を画像および電気生理試験で確認した定位ガイダンスの下で,電極を両側の視床下核に植え込んで試験した.20 人を少なくとも 12 ヵ月追跡調査した.臨床評価は,統一パーキンソン病評価尺度,ジスキネジー尺度,そして手術前後に患者の薬剤無効および有効期間に合わせて実施した経時的試験であった.
視床下核の電気刺激の 1 年後,薬剤無効期間の患者の日常生活活動スコアと運動試験スコア(それぞれ,統一パーキンソン病評価尺度パート II および III)は,60%改善した(p<0.001).サブスコアは四肢無動,硬直,振せん,および歩行について改善した.薬剤有効期間に実施した試験では,パート III のスコアは 10%改善した(p<0.005).ドーパミン作動薬の平均用量は半減した.認識力スコアは不変のままであったが,1 人は植込み手術のさいの脳内血腫後に麻痺と失語を示した.
視床下核の電気刺激は進行期パーキンソン病の有効な治療である.薬剤無効期間の症状の重症度は減少し,レボドパの用量を減少することができ,その結果ジスキネジーが減少した.