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October 15, 1998 Vol. 339 No. 16

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セレンとヨウ素状態に関連したチベット農村部におけるカシン–ベック骨関節症
KASHIN–BECK OSTEOARTHROPATHY IN RURAL TIBET IN RELATION TO SELENIUM AND IODINE STATUS

R. MORENO-REYES AND OTHERS

背景

カシン–ベック病は,チベットの特定の地域の風土病である変性骨関節障害であり,その地域ではセレン欠病症もまた風土病である.

方 法

セレンは甲状腺ホルモン代謝に関係するため,われわれは,カシン–ベック病を有する被験者がいない対照の 1 村を含め,チベットのラサ近郊の 12 の村に住む 5~15 歳の被験者 575 人において,セレン血清濃度,甲状腺機能,およびカシン–ベック病の関連を調べた.臨床,放射線,および生化学データを収集した.

結 果

被験者 575 人中,280 人(49%)がカシン–ベック病で,267 人(46%)が甲状腺腫,そして 7 人(1%)がクレチン病であった.尿中ヨウ素を測定した被験者 557 人中,66%ではヨウ素の尿中濃度が 2 mg/dL 未満(157 nmol/L;正常値 5~25 mg/dL [394~1,968 nmol/L])であった.ヨウ素の平均尿中濃度は,カシン–ベック病被験者では対照被験者より低く(1.2 対 1.8 mg/dL [94 対 142 nmol/L],p < 0.001),甲状腺機能低下症はより発生率が高かった(23% 対 4%,p = 0.01).重度のセレン欠乏症はすべての村で報告された;被験者の 38%では,セレン血清濃度が 5 ng/mL 未満(64 nmol/L;正常値 60~105 ng/mL [762~1,334 nmol/L])であった.多変量解析のために年齢と性別を調節すると,ヨウ素の尿中濃度が低いこと,血清甲状腺刺激ホルモンが高いこと,および血清チロキシン結合グロブリン量が低いことは,カシン–ベック病のリスクの増加に関連したが,セレンの血清濃度が低いことはリスクの増加に関連しなかった.

結 論

重度セレン欠乏症が風土病である地域では,ヨウ素欠乏はカシン–ベック病の危険因子である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 339 : 1112 - 20. )