遺伝的要因が患者の特発性膵炎への素因となるか否かはわかっていない．嚢胞性線維症患者では，嚢胞性線維症膜通過伝導制御（CFTR）遺伝子に変異があれば，典型的な場合は肺および膵臓に機能不全症を引き起すが，膵炎を引き起すことはまれである．われわれは，嚢胞性線維症の肺疾患を有しない人において，特発性膵炎が CFTR 変異に関連するか否かを調べた．

患者 27 人（診断時の平均年齢，36 歳）を調べ，そのうち 22 人は女性で，特発性膵炎の評価のために付託された．CFTR 変異 17 個および CFTR 遺伝子のイントロン 8 における 5T 対立遺伝子の有無に関して DNA を調べた．5T 対立遺伝子は機能的 CFTR のレベルを低下させ，男性では不妊症の遺伝フォームに関連する．異常な CFTR 対立遺伝子 2 個を有する患者はさらに，認識されていない嚢胞性線維症関連肺疾患の有無を調べ，ベースラインおよび CFTR 媒介イオン輸送をともに鼻粘膜において測定した．

特発性慢性膵炎患者 10 人（37%）は，少なくとも一つの異常な CFTR 対立遺伝子を有した．CFTR 変異 8 個を検出した（発生比，11 : 1; 95%信頼区間，5 ～ 23; p ＜ 0.001）患者 3 人では両対立遺伝子が罹患していた（発生比，80 : 1; 95%信頼区間， 17 ～ 379; p ＜ 0.001）．これらの患者 3 人は，汗の試験，肺活量測定法，またはベースラインでの鼻電位差測定に基づくと，嚢胞性線維症に典型的な肺疾患を有しなかった．しかし，各患者は鼻で異常な c-AMP-媒介塩素輸送を示した．

特発性膵炎の評価のために付託された患者の群では，CFTR 遺伝子の変異と膵炎のあいだに強い関連があった．これらの膵炎患者における異常な CFTR 遺伝子タイプは，男性不妊症に関連するものと類似している．