October 1, 1998 Vol. 339 No. 14
QT 延長症候群の臨床経過に及ぼす遺伝子型の影響
INFLUENCE OF THE GENOTYPE ON THE CLINICAL COURSE OF THE LONG-QT SYNDROME
W. ZAREBA AND OTHERS
先天性 QT 延長症候群は,心カリウムチャネル遺伝子の変異(LQT1 座での KVLQT1 および LQT2 座での HERG)およびナトリウムチャネル遺伝子(LQT3 座での SCN5A)の変異によって生じ,心電図上で明確な再分極パターンを示すが,どの遺伝子型が疾患の臨床経過に影響を及ぼすかはわかっていない.
国際 QT 延長症候群登録(International Long-QT Syndrome Registry)に登録された 38 家系の構成員 1,378 人中 541 人の遺伝子型を決定した:112 人が LQT1 座に,72 人が LQT2 座に,62 人が LQT3 座に変異を有した.遺伝子異常者 246 人と,調べた家系の構成員 1,378 人全員において,遺伝子型に応じて出生から 40 歳までのあいだに起こった心イベント(失神,回復した心停止または突然死)の累積確率および死亡率を決定した.
心イベントの発生率は,LQT1 座に変異を有する被験者(63%),LQT2 座に変異を有する被験者(46%)では,LQT3 座に変異を有する被験者(18%)より高かった(3 群すべての比較に関して p<0.001).多変量 Cox 解析において,遺伝子型および心拍数に関して補正した QT 間隔は,最初の心イベントの有意な独立予測因子であった.調べた 3 群の家系の構成員では,40 歳までの累積死亡率は同程度であった;しかし,心イベント中に死にいたる確率は,LQT1 座に変異を有する家系(4%),LQT2 座に変異を有する家系(4%)に比べ,LQT3 座に変異を有する家系(20%)で有意に高かった(p<0.001).
QT 延長症候群の遺伝子型は臨床経過に影響を及ぼす.心イベントのリスクは,LQT1 および LQT2 に変異を有する被験者では LQT3 に変異を有する被験者より有意に高い.遺伝子型によらず,累積死亡率は同程度であるが,致死的な心イベントの割合は LQT3 座に変異を有する家系では有意に高い.